社内インフルエンサーって何?

パンフレット担当を任命された営業部員三条あゆみは、山田製造部長からの長ーいヒアリングを終え(尻切れトンボだったけれど)営業部の自席で愛妻弁当を拡げる大亜先輩に、報告まじりの昼食タイム中。

まだまだ新人の三条に、会社の大きな責任が懸かっていることを、じりじり思い知らしめてくる大亜であった。

自席ランチで報告を

P担三条
インフルエンザは今年、まだ罹っていませんよ。
1営大亜
フフっ
P担三条
なんですか、そのフフッってのは?
1営大亜
三条がパンフレット担当に任命された理由。
P担三条
インフルエンザに罹ってる疑いがあるからですか? はぁぁー!?
1営大亜
インフルエンサー、や。
P担三条
サー?
1営大亜
インフルエンザ、じゃなくって、インフルエンサー。語源は一緒らしいけどね。

廻りに与える影響力が大きい人のことを、そう呼ぶんや。

P担三条
わたしが、ですか?
1営大亜
任命した営業部長から直接聞いたわけじゃないけどね…。

社内の部署を横断して、いろんな部署の協力を仰いでいかないと、これからの時代のトリセツ、カタログ、パンフレットづくりは立ち行かなくなるように俺は思ってるんや…。

P担三条
はい。
1営大亜
それがスイスイできるのは、三条、まさかのキミや、ということなんちゃうか。
P担三条
なんで、わたし?
1営大亜
「怖いもの知らず」って強いからな。
P担三条
怖いもの知らず、ですか?…わたし
1営大亜
おまえ、自分では気付いてないやろうけど、部長や専務にでも、物怖じせず話をしに行けるやろ?
P担三条
物怖じしてますけど…それなりに(脇汗なんかも)
1営大亜
社内で腫れ物に触れるように接していられるより、「ぶちょー!」ってフランクに声掛けられるのは悪くないもんやと思うぞ。

三条からすれば、もう親の年代やし。

P担三条
ほんとですね、フフっ。ちょっとカワイイかも。
1営大亜
そんなふうに、社内のキーマンの懐にズケズケ入っていけるキャラが必要やったと思うんや。
P担三条
ズケズケ?
1営大亜
悪く思うなよ。

悪気のないズケズケは、才能や! へへ。

P担三条
ムッ…
1営大亜
そういう調整役を、どの部署から出すのがええのか、専務も営業部長も悩んでたんとちゃうかな。
P担三条
調整役ですか…

わたしの役割ってなんですか?

1営大亜
〈調整〉のその前に…

三条が今やってる社内を横断するインタビューを通じて、部署のキーマンと接点を生成しているようなもんやな。

トップダウンの号令だけじゃなくって、新人のパンフレット担当が特命を受けて「いろんなことを教えてください」とお願いに走り回る。

P担三条
「わからないことだらけですぅ〜」って、正直に言いましたけど…。
1営大亜
それでええねん。

予備調査ですと断って、部署ごとのお困りごとを訊いて回ってるやろ。

「困りごと」を訊かれると、部課長でも、つい本音がポロッと出たりする。

ボトルネックになってる原因も、実は判ってたりするんやろうな。

1営大亜
普段は自分たちの責任だけではない、と思っていても、言い出しかねて口を閉ざしている部課長が「よくぞ訊いてくれました」とポロポロ語りだせば、あとはうまく先導していけば芋づる式に出てくる。
P担三条
山田製造部長みたいに、とめどなく…。笑
1営大亜
地味ながら、商品説明の性能を向上させていくためには、黙ってないで、訊きだして、修正できるところから改善していく。

これからゼッテー欠かせないことや。

P担三条
やっぱり重責…じゃないですか
1営大亜
そやな、三条にかかってる。
P担三条
えぇ~~
1営大亜
三条がやることは、関係するみんなをその気にさせることや。

三条がトリセツを作るんじゃなくて、責任もお前一人が背負うんじゃなくて…。

P担三条
その気にさせる担当?
1営大亜
みんなで背負う責任の重さに気付かせる。

だから部署間で連携・協力しあって、説明の性能を向上させていきましょう、ってことを先導する担当、かな。

P担三条
説明性能の向上をめざす、っていう言葉は、誰にも刺さりそうですね。
1営大亜
そや、性能向上は、今や設計や工場だけで目指すもんやないねん。
P担三条
はいっ、なんだか意欲が湧いてきましたっ!

 

[ 続く ]

インフルエンサー?

製造部の歴代のマニュアルづくりに奮戦してきた山田部長。部長はマニュアルにおける会社の歴史そのものだ。

ひとつ訊けば、10返ってくる山田部長の熱に圧倒され、感心すること仕切りのパンフレット担当三条だった。

営業部に戻り、お手製弁当をカバンから取り出し、自席で愛妻弁当を拡げる大亜先輩に報告まじりの昼食タイムだ。

社内ヒアリング報告@自席ランチ

P担三条
いやいやー、じっくり訊いたなぁ〜。ふぅ〜。
1営大亜
Non Stop 山田部長オンステージ か?
P担三条
はい、それはもう…出てくる、出てくる。とめどなく溢れてきましたよ。

疲れましたけど、昔の話をもっと聞いていたかったなぁ。

1営大亜
山田部長には、そういうとこ、あるよな。

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インターネット時代の要請に向き合うトリセツ

まだインターネットが、モデムでダイヤルアップ接続していた1995年ごろ。メーカーは国内の業界団体が指導するガイドラインに沿って、製品に同梱する印刷物「取扱説明書」で使用説明を行っていた。

そして取扱説明書に求められたのは「機能・操作の説明」だった。

山田部長
とにかく、ようやく、1995年にWHO加盟国の国際標準となる使用説明のお手本が示されたわけや。

国内では、各業界団体がお手本を示して「このように取扱説明をなさい」と指導することになった。メーカーはその指導に叶うように取扱説明書をリニューアルしはじめた。

P担三条
わたし、二歳でした。…というより、部長、この年は阪神淡路大震災の年ですよね。
山田部長
そや。神戸製鋼スティーラーズがラグビー日本選手権V7を果たした翌日のことや。

社員の被災者は32人。死亡者が出なかったのは、なんとも不幸中の幸い。一週間は会社がまったく機能せぇへんかった。今更ながら、あの事態を当時のメンバーでよぅ切り抜けられたなと思う。

P担三条
…。
山田部長
あの時代の取扱説明書は、わしがWindowsのワープロで作ってたんや。

当時パソコンが使える若手は製造部でも重宝された…というか「山田、頼んだぞ、俺コンピュータなんかわからんし」ってほったらかしや。

山田部長
本文ブロック外で説明するようなパーツの呼称説明は、できるだけ本文の当該箇所の近くにあったほうがええやろ。

A4用紙に、幅の違う二列の文字ブロックが縦に走ってるイメージや。

P担三条
…はぁ、なんとはなしに。
山田部長
複雑なレイアウトになるややこしいところは、ワープロ印字をコピー機で縮小したりしたものを切り貼りして、それをコピーして製品に同梱してたんや。
P担三条
…よう喋りはるな、山田部長…
山田部長
そうそう年末には「Windows 95」がリリースされた年やったな。

コピーのトナー成分が製品にへばり付くから、そのうち印刷に置き換わっていったけどな。笑

P担三条
MS WORDって、今でも複雑なレイアウトができませんね。契約書みたいに定型書式にはいいんですけど。

2005年、インターネット常時接続時代

山田部長
そんな時代を経て、2005年頃になると、インターネット接続プロバイダによる常時接続の時代がようやく到来する。

家庭でも普通にインターネットで買い物をしたりする時代がやってきた。

P担三条
わたし、12歳です。
山田部長
インターネットを手に入れたことで、世の中はこのあたりから激変していくんや。

ドッグイヤーという言葉を知ってるか?

P担三条
犬は人間の七倍のスピードで成長することを、IT社会の急激な成長に例えた言葉ですよね。
山田部長
そうや。

楽天グループ行動規範の中の「成功のコンセプト」に

スピード!!スピード!!スピード!!

という言葉がある。重要なのは、他社が1年かかることを1ヶ月でやり遂げるスピード、だそうだ。

P担三条
そうですね。巨大ECサイトだけでなく、銀行、証券、球団…今やなんでも揃う巨大グループですよね。
山田部長
あれだけ急成長するには、全員が一丸となって尋常ならざるスピード感覚で物事を進めていかないと達成し得なかっただろう。

そんな時代のスピード感もあってか「なんでもネットで」という欲望が生まれ、急速に定着していった。

gooやWikipediaが登場すると、おそるおそる判らないことをネットで検索することが定着しはじめた。

みんなに「ハテナ?は、ネットで」という気持ちが定着してきたんやな。

トリセツ提供方法の多様化

P担三条
トリセツはまだ紙マニュアルだったんですよね?
山田部長
提供方法としては紙に印刷したものを同梱してたぞ。

でもな、製品に入ってたトリセツなんか、製品パッケージを開封して、見ずに箱と一緒に捨ててしまったり、大切に取っておいてくれる人でも、どこに置いてたか忘れてしまったから、あとでWEBでも閲覧できるようにして欲しいという要望がだんだん寄せられてくるようになった。

P担三条
そりゃそうですよね。当然の流れだと思います。
山田部長
うちでもマニュアル類のPDFを順次ダウンロードできるようにした。
P担三条
今やお客様ファーストの時代ですから…。
山田部長
まだそうでもなかったんや。

当時のマニュアル類のほとんどは、メーカー目線のマニュアルづくりやった。

P担三条
え…?
山田部長
ISO/IEC Guide 37:1995 で示されているガイドでは、製品の機能説明と、操作方法を正しく伝えればよかった。
P担三条
はい、そう聞きました。

メーカーの独善からお客様指向へ

山田部長
世の中がお客様指向に向いていく中で、メーカーの押し付けマニュアルではなく…つまり

「このボタンを押す」▶「矢印の方向にレバーを動かす」▶

と、意味もわからず操作を延々とガイドされても、何が行われようとしているのか当人にはまったく判らないままや。

今このお客様は、何をしたくて(目的)この操作(ボタンを押す)を行うのか。【目的説明】が欠けていたことを指摘されるようになった。

P担三条
なるほど。

お客様【◯◯がしたい】
機械側 それなら「◯◯ボタンを押して、メニューから◯◯を選んでください」

というガイドの仕方が必要なんじゃないか、ってことですか。

山田部長
そうや。人がマニュアルを開く時、必ずお客様それぞれに目的がある。目的指向のガイド方法も考慮していかなあかんよ、という潮流や。

そもそも「操作方法」を説明しなくても、箱を開けたらすぐ使えることが理想。

山田部長
それでもメーカーは「操作手順」を書きたがる。

扉を開けて、モノを置いて、扉を閉めて、あたためボタンを押して、チン…で、はい、できあがり。

「うちのレンジは、簡単でしょ!」と広報したいわけ。

P担三条
そうですね。
山田部長
お客様が解決したい目的に沿って、つまり目的別の切り口で編集されているトリセツのほうが有用とちゃうか、という問いかけや。
P担三条
はい、確かに。

使うのは日本人とは限りませんし。

ワールドワイドに販売してるApple製品は、説明がミニマムですよ。「えっ、これで終わり?」ってくらい。

山田部長
説明の字はちっちゃいけどな。グレーの文字やし。ええカッコつけとる。
P担三条
多言語対応ということも、紙への印刷では何冊も用意しなくちゃいけませんよね。日本人向け製品でも。

インターネットでいろんなものが世界中から手に入るようなると、トリセツもグローバル対応をしなくては。

他言語版のマニュアルづくりも急務です。

山田部長
もうひとつの考え方として、言葉を尽くさなくても、直感的に見たらすぐ使えるように開発しようぜ、という潮流が現れた。
P担三条
何も見なくても、すぐ使用できる。

それが理想ですよね!

山田部長
理想は高し、言うは易し…なんや。

現実的には、世界各国の法規に対応せなあかん。

言葉の壁、文化の壁。とりわけ文化の壁は、翻訳だけでは簡単に乗り越えられへんのや。

チャイム
RRRRR
P担三条
あ!部長!もうお昼です!
山田部長
おぉ、続きはまた今度。

とりあえず、こんなことで何か報告できるか?

P担三条
お昼はこれからですけど、なんだかもぅお腹いっぱいなくらいです!

ありがとうございました!

続く

営業部のBtoC販促ツールをどう設計する

第二営業課への突撃取材での感触に気を良くしたP担三条は、次に第三営業課(略称:三営)の課長デスクに移動した。あいにく三営課長は外回りで留守。隣席の三営課長補佐 小平をつかまえた。

 小平さん、ちょっとお時間いいですか?

 ん、なんだ。

 営業部マターのパンフレットについて、ヒアリングして廻っています。三営での使われ方って、いまどんな感じですか?

 パンフレットねぇ…。一応、総合カタログには全品網羅しているんだが、まぁ総合カタログを手にとって注文してくれるような取引先は無いわな。

 二営も同じことを仰ってました。 続きを読む 営業部のBtoC販促ツールをどう設計する

営業部の取り扱いアイテムを知る

営業部の新任パンフレット発注担当者(略してP担)三条あゆみは、営業部マターのパンフレットがどんなふうに使用されているのか、いま必要な営業用ツールは何かを探るべく、隣島の第二営業課長席に歩み寄った。

 お疲れ様でーす。中島課長、ミルクたっぷりコーヒー、どうぞ。

 お、なんや、なんや? 今日は、なんの探りや? 続きを読む 営業部の取り扱いアイテムを知る

営業部が取り扱うパンフレットを見渡してみる

部長から社内の広報印刷物の現状といま必要な広報関連ツールの現状を調査するよう言い渡されたパンフレット発注担当 三条あゆみ は、まず自分が所属する営業部で、どんな現状になっているのか確かめてみることにした。

 大亜先輩、部長に確かめてきましたよ。

 おぉ、なんだって?

 まず、私は〈パンフレット発注担当者〉であり、パンフレットをつくる係ではない、と念を押されました。

 そうだろうね。 続きを読む 営業部が取り扱うパンフレットを見渡してみる

部長!いったい私にど~せよと?

パンフ担当に任命されたばかりの三条あゆみは、いつもの朝礼が終わると同時に部長席に駆け寄った。

「部長、部長、部長!」
「なんだ、なんだ、なんだ。三回も呼びつけよったな」

「部長!パンフ担当って、何を担当するのですか? まるまる2日間考えて、何がわからないかが、ようやく解りました!」

「そいつはおめでとう。わからないことが解るようになったってことは、大いなる進歩だ。」 続きを読む 部長!いったい私にど~せよと?

目的別パンフレットのアレコレ

前回、同じ営業部の先輩 大亜の口から、まさかの「戦略性」とか「売れるしくみのデザイン設計」とか、難しい言葉がポンポン出てきて、パンフレット担当 三条あゆみ は仰け反ってしまった。

「何をつくればいいのかもわからない新任パンフレット担当の私にやれ〈戦略〉だの〈売れるしくみ〉だの、何言ってるんでしょ、バカじゃないの」

とムカつく心を鎮めながら、パンフ担当者として、これから整理しないといけないことは何かについて向き合ってみる。 続きを読む 目的別パンフレットのアレコレ

何を叶えるパンフレットなのか

何から手を付けたら良いのかわからないまま、ぐるぐる思案していることに疲れたパンフレット担当、略して「P担」こと営業部の三条あゆみは、直属上司の大亜(だいあ)先輩に相談してみることにした。

 大亜先輩〜っ、部長から直々にパンフレット担当を仰せつかってしまったんですけどー、何から始めたらいいのか、ぜんぜんわかんなくってー。正直、ただいま絶賛パニック中です。 続きを読む 何を叶えるパンフレットなのか

ある日突然、パンフレット担当になったら

キミに新しいパンフレットを担当してもらうよ

ある日、部長から直接指名されたら…。

昭和生まれの人なら、これは「ドッキリ」じゃないのか?と、ヘルメットを被って、プラカードを手にしたニヤついたお兄さんを探して、キョロキョロまわりを見廻したりするんじゃないでしょうか。 続きを読む ある日突然、パンフレット担当になったら

はじめてのパンフレット発注担当者指南