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演奏会プログラムって、どうやって作るの?

わぉ、定期演奏会のプログラム制作担当者に指名されちゃったぞ。
楽しそうな半面、どこから手を付けたらいいのか、わからないよー。


プログラム担当大臣、着任おめでとう!
大人の階段をひとつ登れる機会を与えられたことに、素直に感謝していいぞ。
 
これから部活動が自主的に公演(演奏会、発表会、上演会など)を企画開催する際に、お客様に配布するパンフレットのつくりかたを(勝手に)指南していくのでヨロシク。
 
私は、かれこれ数十年以上前の高校生の時に、定期演奏会のパンフレット制作を担当したことがあるので、広〜い意味であなたの先輩である。
 
べつに偉そうにしないけれど、ちょっとだけ尊敬してもよいぞ。
 
ここでは、公演パンフレットづくりにおいて、担当者は何に注意して、どのように進めていけば、失敗しなくて済むのか。勘所を指南していきたいと思う。
 
「プログラムはこうあるべき」という正解はない。
ご来場のお客様に「んーと、まぁ30点」と評価されるものでもない。
売り物でもなければ、なんなら無くたっていいものだ。
 
公演の核心は舞台上で繰り広げられるパフォーマンスであることは間違いないけれど、君たちクラブの総意として、お客様に伝えたい思いや活動の記録を、サブコンテンツとして表現することもできるツール、それも公演プログラムだと思うのだ。
 
部活動であるからには、担当者がおもしろく向き合えること。
そして制作過程で、授業では学べない「学び」があること。
他人になにか行動をお願いして、きちんと完了してもらうこと。
タスクの実行において、メンバー間のコミュニケーションが活発になり
チームメンバーに「責任」や「助け合い」が生まれ、ゆくゆくは絆の形成も期待できる。
 
人が集まり、組織としてなにかに取り組んだ結果として、一定の成果を上げ、それを披露する。
これは大人の社会、会社の中や企業間で日々行われていることと同じ。
 
だから同級生よりひと足お先に、大人社会の疑似体験ができる、ありがたい機会を得られて「おめでとう」と申し上げているわけだ。
 

パンフレットの目的はなんだ?


まず、プログラム担当者として…というより、クラブの総意として公演で配布する冊子になにを求めるのか、ということを考えてみよう。
 
とはいえ、いきなり「配布冊子に求めるもの」と自問自答しようとしても、なかなか反応できないだろう。
 
たとえば、みんなで相談してみたこんな会話をイメージしてみよう。
 

○定期公演のプログラムなんだから、演奏する曲目だけ記載すれば良いんじゃね?
○オレたち独自の曲目解説なら、あってもいいんじゃね?
○パンフレットって、開演までの時間に、じっくり読んでもらえるね。
○そもそもプログラムなの? パンフレットなの?
○1年間の活動の集大成だから、オレたち三年生の思いを記したいよ。
○それなら二年部員の思いも記したいっす。
○全員顔写真載せれば、一年時と三年時でこんなに変わったって分かるよ。
○顧問の先生や監督・コーチにも何か書いてもらおうよ。
○じゃあ全員の集合写真を撮ろうぜ。
○夏の強化合宿のBBQスナップ写真も載せようか。
○練習やステージのお世話をしていただいたOBや父母会にも感謝を伝えたいと思う。
○舞台裏でステージを支えてくれている人も紹介したいな。
○4月に入学してくる新一年生の獲得にも一役買ってくれるんじゃね?
○ところでパンフレットって、いったいなんぼでできるの?
○その費用は、どうやって捻出する?

 
目的と内容がごちゃまぜになっているけど、配布冊子に載せたいコンテンツ(内容)は、イメージできてきたね。
なにやらワイワイと楽しそうだ。
 
まだ話の途中だけど、ざっと目的を整理してみよう。
 
▶定期公演は、一年間の部活動の集大成
▶演目=プログラム(公演の演奏順、楽曲の情報)
▶そこで配るパンフレットは、ステージ以外の活動報告も記せる
▶メンバー個人の思いや考え、成長記録も表現できる
▶部員だけでなく、指導者や支援団体(父母会/OB会)も含めたクラブ組織の紹介ができる
▶4月からの新人獲得にも活用できそう
 
こんなカンジで、パンフレットの意義・目的をメンバー全員で共有できたら、実際にどうやってつくっていくのか、具体的に考えていこう。
 

状況の振り返り

たとえば、こんな設定で想像してみよう。以下はフィクションであるぞ。
 
○ ○ ○
半年前の申込み抽選で獲得!、区民ホールを全日使用できることが決まった。
 
【決まったこと】

●会場:区民ホール(最大収容800名)
●公演日:3月25日(土)(9:30〜21:30完全撤収)
●会場使用料:全日(9:30〜21:30)約68,000円(付帯設備仕様費含む)

 
夏休み明けの9月、半年後の3月に区民ホールでの演奏会開催が決定。
さっそく3つのチームが編成された。
▶Stage 舞台構成チーム
▶Pamphlet パンフレット制作チーム
▶PR 広報チーム
 
【舞台構成チーム】は、主に三年生が中心になって、演奏曲目の選定、舞台構成、演出まで、ステージ上で演じる内容を決定。
本番までの半年間で、完成度の高いパフォーマンスにまで導く責任重大な役割を担う。
3年間の集大成だけに、モチベーションも高く、これから先輩方の機嫌が悪い日が続く。
 
【パンフレット制作チーム】は、2年生山田がチームリーダーに任命された。
部内では、いわゆる「パンフレット担当大臣」と呼ばれる。
山田と共にパンフレット制作を担当する、2年の佐藤が副大臣。
 
まずは二人の大臣で、なにから始めればいいのかわからない。
 
コロナ禍の2年間、この部活動はほとんど活動ができなかった。
三年前、最後の定期公演に携わった当時の1年生は、今3年生。
残念なことに大学受験を控え、二学期が始まる9月に三年生の半分が引退してしまった。
 
引退後、形ばかりの引き継ぎで申し送りされたひとつ「過去のプログラムのコレクションが資料ケースにあるかも」。
アタマのなかで「あるんかい、ないんかい」と3回リフレインして、記憶に留めた。
 
後日、担当大臣が部室の保管棚の資料ケースから見つけた、他校の定期演奏会で配布されたパンフレット。
表紙はカラー、中はモノクロの12ページもの。
校長、監督、OB会、父母会のご挨拶に始まり、演目、曲の解説、年間の部活動、パートごとのメンバー紹介、合宿の様子など部活動の様子が伺える。
地元のパン屋、司法書士、お好み焼き屋、楽器修理店など、広告がたくさん掲載されていた。
 
一方、他校の軽音楽部の自主演奏会では、バンド名だけが出演順に並ぶ、A4のモノクロコピーだ。
「ちょっと味気ないよな」と佐藤副大臣も小声でつぶやいていた。
 
さてさて、なにからはじめよう。
 

まずは考えられる課題を書き出そう(ざーっと、でいい)。

 

 
つくるもの確認。

A:プログラムにするか、パンフレットにするか
B:ポスターも作って、掲示板に貼る
 ↳どうせなら、 近くのどこかに貼れるとこ、ないの?
C:チケットもつくるんやね

 
まず4つの課題を付箋に書いた。
 

課題A:プログラム or パンフレット

「プログラムにするの、パンフレットにするの?」と問われても、大臣二人だけでは決められない。
 
副大臣「曲目だけのペランペランプログラムは、ちょっと残念なカンジやなぁ」
大臣「つくるのはカンタンそうやし、お金もかからんし」
 
生徒会室のガリ版で刷れば、タダでできることは知っている。
 
副大臣「生徒会の予算でできるって聞いたよ」
大臣「〈協力:○高生徒会〉って記載したらええって、生徒会のヤスオが言ってたわ」
副大臣「わら半紙やけどな」
大臣「ザラ判紙とも言う」
副大臣「私らクラブとしての支出はタダやけど、生徒会のお金を使ってるから、ホンマのタダやないねんな」
大臣「それはどうやろな、ちょっと気になるな」
副大臣「ニュースで聞く〈議員が政党の○○費をなんちゃら…〉みたいや、なんか悪の匂いがする。これでもマジメ女子やねん」
 
おもむろにスマホで検索しはじめる両大臣。
 
■ 印刷費用はなんぼかかるの?
 
副大臣「せめて白黒コピーにしよや」
 
大臣「コンビニのコピー機 A4モノクロ10円やで」
副大臣「え、ミニストップは、A4モノクロ5円やて」
大臣「半分やん!」
 
副大臣「区民ホール、最大800人収容やから、5円☓800枚=4,000円や」
 
▶わら半紙ガリ版摺プログラム 0円
▶白黒コピープログラム  4,400円(税込)

ちなみに、ミニストップのカラーコピーなら 30円☓800枚=24,000円
▶カラーコピープログラム(ミニストップ) 26,400円(税込)
 
セブン、ファミマ、ローソンでは A4カラー 50円だから
50円☓800枚=40,000円
▶カラーコピープログラム(3大コンビニ)44,000円(税込)
 
副大臣「17,600円の差、これは大きいな」
大臣「大きいな」
 
ミニストップに設置している5円コピー機は、ほかにも置いているらしい

  • ・イオン
  • ・マックスバリュー
  • ・ダイエー
  • ・ウェルシア
  • ・スギ薬局
  • ・ココカラファイン
 
参考までに、印刷屋さんに頼んだら、いくらになるでしょうか?
ちょちょっとネットで調べてみました。
 
A4コピー用紙、片面1ページ、 フルカラー印刷(即日引取)、800枚:16,000円
▶カラー印刷プログラム(印刷屋さん)17,600円(税込)
 
恐るべし、ニッポンの印刷屋さん。
一枚20円で仕上げてくれる。5円コピー機でも敵わない。
 
コピー機と印刷とでどちらが安くなるのか、だいたい150〜200枚あたりから、印刷のほうが安くなっていくようですよ。
(印刷屋さんによって価格は違います。正確な価格は地元の印刷屋さんに見積してみましょう)
 
白黒ガリ版摺プログラム          0円
白黒コピープログラム(ミニストップ)   4,400円(税込)
カラーコピープログラム(ミニストップ)26,400円(税込)
カラーコピープログラム(3大コンビニ)44,000円(税込)
カラー印刷プログラム(印刷屋さん)  17,600円(税込)
 
大臣「意外やわ、大量のコピーは高いんやな」
副大臣「それやったら、パンフレットも意外と安くできるんかな?」
 
ダイアローグさん(→うちんとこのコト)に相談してみたら、よくある高校部活動の定期公演パンフレットの印刷見積を教えてもらった。
 
【見積印刷仕様】
・A4 12ページ
・表紙カラー
・中面モノクロ
・用紙:マットコート110kg
・中綴じ
・部数:800部
▶表紙カラー/中面モノクロ印刷パンフレット(印刷屋さん) 55,000円(税込)

副大臣「12ページの公演パンフレット一冊あたり69円やて」
大臣「コンビニでカラーコピー一枚50円、ミニストップでも30円」
副大臣「パンフレット1ページあたり約6円! 安〜ぅ」

 
大臣「ほな、 12ページ全部カラーにしたら、どうなん?」
副大臣「ダイアローグさんに訊いてみよう」
ダイアローグ「はい、こんなカンジです」
 
・A4 12ページ
・表紙カラー
・中面カラー
・用紙:マットコート110kg
・中綴じ
・部数:800部
▶オールカラー印刷パンフレット(印刷屋さん) 72,600円(税込)

副大臣「12ページのオールカラー公演パンフレット一冊あたり約91円」
大臣「全ページ、カラーやからね。パンフレット1ページあたり約7.6円」
副大臣「ニッポンの印刷、おそるべし」
 
大臣「これやったら、パンフレットもええなぁと思う、見たらポイっと捨てられにくくない?」
副大臣「終演後、区民ホールの周りに捨てられたプログラムが舞ってるシーンが見えたわ」
大臣「資料ケースにあった、下1/3に広告がぎっしりついてる他校のパンフレット。あんなん、できひんかなぁ…」
 
大臣たちは、ようやく収益モデルを考え始めたようだ。
 
副大臣「仮に広告ひとつ3,000円とするでしょ。3,000☓24点=72,000円」
大臣「24点の広告を掲載できたら、ほぼ印刷費がまかなえる!」
両大臣「おぉーっ!」
 
副大臣「そんなこと、できるかな?」
大臣「たとえばやけど…」
 
大臣「表紙だけカラー印刷とすれば、広告もカラー。これが10,000円の広告掲載費の特等席とする」
副大臣「おぉ、ええなー」

 
大臣「中面は、各ページの下1/4サイズの白黒広告枠が3,000円。それが8つ埋まったら24,000円」
副大臣「最後のページは、広告だけ集めた協賛ページや。1/3ページサイズ広告が6枠、合計18,000円」
大臣「全部広告が埋まったら52,000円か。うーん、もうちょっとやな」
 
副大臣「16ページに増やすやろ。広告だけ集めたページより、ページを開いて左は記事、右は1/3広告を3枠にすると…」
大臣「スマホの電卓でチャチャチャっと、ほら出た」
副大臣「どれどれ」
 
大臣「下1/4広告が、全部で10枠☓3,000円で、30,000円」
大臣「1/3広告が、全部で9枠☓3,000円で、27,000円」
副大臣「カラー全面枠が10,000円やろ」
大臣「合計67,000円。まだ足りんね…」

副大臣「1/3広告を4,000円にしたら…36,000円」
大臣「合計76,000円や、やったーっ…ん?ページ増やしたんやったわ」
 
副大臣「こういうときは、ダイアローグさんに訊いてみる」
ダイアローグ「はいはい、全16ページ、中モノクロなら、こんなカンジです」
・A4 16ページ
・表紙カラー
・中面モノクロ
・用紙:マットコート110kg
・中綴じ
・部数:800部
▶オールカラー印刷パンフレット(印刷屋さん) 65,000円(税込)
 
副大臣「ぜんぜんいけるやん!」
大臣「そんなにうまいこと、広告集めれるんかなー」
副大臣「私ら、お金のこと勘定しはじめたら、めっちゃ頑張れるやん」
大臣「ほんまやな。なんかできそうな気がしてきた〜」
副大臣「うん、さっそく明日、みんなに相談してみよか」
 

課題B:ポスターもつくる? 掲示板に貼る? 他に貼れるとこある?

副大臣「ポスターもつくるんやんな?」
大臣「過去にはつくってたみたいやで」
副大臣「校内に貼るんやな? 掲示板かな」
 
大臣「校外にも貼ってもらえるとこ、ないかな?」
副大臣「パンフレットに広告出してもらえるところには、ポスターも届けて貼ってもらおう」
 
大臣「他はないかなー?」
副大臣「広報チームに探してもらおうか」
大臣「それ、ええな」
 
副大臣「ほな、ポスター何枚いるか、まだわからへんな」
大臣「誰がポスターつくるん?」
副大臣「誰か希望者を募ってみよか」
大臣「うん、そうしよ」
 

課題C:チケットどうする?

副大臣「チケットも印刷する?」
大臣「まず見積やな?」
副大臣「パンフレットと一緒に印刷お願いしたら、ちょっとはまけてもらえるんちゃう?」
大臣「チケットの裏も広告にできる?」
副大臣「お、アタマええな!チケット印刷代はその広告でまかなえるやん」
 

はじめてのスケジュール管理


 
パンフレット制作係をワンオペで担当していても、スケジュールは「管理」しなければなりませんよ。

(ワンオペ:One-man Operation:ひとりだけで店舗営業しているコンビニ店のような状況)

自分一人だけでやっているんだから「管理」って言われてもねー。
公演開催までに印刷間に合えば良いんでしょ?

と思ったあなた。はい、間違いです。
 
たとえば「宿題忘れてた」ということと「パンフレット忘れてた」ということは、できごとのアカン質量が違うことはわかりますよね。
 
会社でも、あるプロジェクトを完遂するまでのスケジュール管理は、担当チームのリスク管理のひとつとして取り扱われます。
〈リスク: risk〉とは〈危険、脅威〉という意味の単語で、「リスク管理」とは、脅威を取り払ったり、事前に脅威をなくすようにコントロールすること。
ビジネス社会では「それなりにがんばってみたけど、うまくいかへんかったわ」では済まされないのです。
 
プロジェクトの各担当者が、それぞれマイペースで作業していては、全体の進捗(しんちょく:物事がどの程度順調に進行しているか)がつかめず、遅れすぎてヤバい危機的状況になっている担当箇所を誰かがカバーしようとしても、もう間に合わない!…なんてことになります。
 
それを滞りなくプロジェクトが完了するように管理するのが、担当大臣のあなたなのです。
 
あなたがつくる、のではなく、あなたが全ページの進行を管理して、間に合わせることの担当なのです。〈ここ重要!〉
 

進捗を管理する手法①:タスクの細分化

大まかなスケジュール感だけで、大きなプロジェクトは管理できません。
じゃあどうするのさ?
 
進捗管理の第一歩は、するべきこと(タスク:作業)を細かく分けていくこと。
 
付箋に書き出して、並べてみるのもいい。
タスクの順番を入れ替えることは、これから頻繁に出てくるからね。
 
このタスクを完了しないと、次に進めないタスクもある。
同時並行で進められるタスクもある。
 
タスクAと思っていたことが、実は複数タスクB・C・Dの集合体だった、ということも出てくるだろう。
 
たとえワンオペのパンフレット担当大臣であっても、実際にタスクを実践・実行するのはクラブのメンバーだから、分業できるようにタスクを細分化する行程は、やっぱり必要な作業なんだな。
 

進捗を管理する手法②:タスクの責任者を決める

クラブには、キャプテンと副キャプテンがいるだろう。
クラスにも、学級委員長と副委員長がいるよね。
 
タスクにも、タスクの責任者と副責任者のような、正・副の担当者を配置しておくといい。
タスクごとに、実行する担当者が充てがわれれば、リスクの回避につなげることができます。
 
もしタスク担当者がケガや疾患などで、クラブ活動はおろか通学が困難という状況になっても、副担当者が空いた穴を埋め、タスクを完了できれば、タスクの進行をストップさせ、全体の進行を硬直させてしまう事態を防ぐことができる。
 
小さな作業=タスクを束ねた単位を「プロジェクト」と呼ぶケースがあります。
プロジェクトを統括する責任者が、タスクの担当者を束ねて、タスクの進行を管理する方法もあります。

1年生がタスクを担当し、2年生がタスクの進行に遅れが出ていないか、問題が起こっていないかを注意して、プロジェクト単位の進行責任を全うするような進め方もいいと思う。
 
経験者としての2年生が、1年生を指導しながら実行させてみて、うまくできない箇所を見つけて、改善策を指導する。
 
先輩と後輩のコミュニケーションによって、できなかったことができるようになる。
これがクラブ活動の真髄だと思う。
 
先輩後輩間の信頼関係は、そうカンタンに形成されるものではない。
同じタスクに向き合い、相手の成長を思い、なぜできないかを一緒に考え、やってみて、うまくいけば一緒に喜びあい中で、強固な信頼関係はできていくのだと思う。
 
意地悪な先輩、エラそうに振る舞うだけの先輩は、怖がられることはあっても、下級生がわからないこと・できないことを相談しにくく、さらなるトラブルの引き金にもつながる。
 
こういう上級生は、後輩との信頼関係は築けない。
あげく、ポンコツの上級生ができてしまうのだ。
 
パンフレットづくりの中で、 信頼される上級生に成長できる機会も創出できるんです。
 

進捗を管理する手法③:進捗状況の共有

パンフレット制作プロジェクトだけの進行スケジュールは、すこしずつカタチを表してきた。
 
さて、定期公演の核心、ステージの内容はどのように決定していくのか。これはこれで、また別のプロジェクトであり、パンフレットの内容とも密接に関連しあっているよね。
 
ステージの内容を決定していくメンバーに、いつまでに曲目や曲順を決定してくれと期限を切ってお願いする必要が出てくる。
 
それでも、舞台の内容を、間際になって曲順を入れ替えたり、「この曲を降ろして、替わりの曲を今から検討する!汗」のような事態が起こるもの。
この間際のドタバタも、あとになれば笑えるんだけれど、当事者は「うそやろ? どうしよ、えらいこっちゃー!」と青ざめる。
 
そんな事態にならないほうがいいんだけれど、より良いステージのためには、起きてしまうがある。
 
ステージプロジェクト、パンフレットプロジェクト、○○プロジェクト…複数のプロジェクトが定期公演のために動いています。
 
定期的なミーティングで、プロジェクトごとの進捗を報告して、いまクラブ全体で何が起こっているのかを共有することはとても大切ですね。
 
つい「自分たちのプロジェクトは大変だ!」と考えてしまいがちですが、プロジェクトごとに異なる大変さがあって、その大変さは実感できません。
横目に先輩方が向き合っている責任を垣間見ることは、来年の自分の立ち振舞いに大きな影響をもたらすでしょう。
 

進捗を管理する手法④:進捗状況を可視化する

タスクやプロジェクトの進捗状況は、ミーティングでの報告ではいまいちわかりにくいものです。
 

めっちゃ、遅れています
いろいろ、大変です
正直、ヤバいです

 
報告において、前半の形容詞は、まず要らない。
 
「めっちゃ」「いろいろ」のような形容詞で状態を表現することを「定性的」表現といいます。賢い人は、報告で定性的表現を使いません。
 
一方、できるビジネスマンは「定量的」に物事の状況を表現します。
 

予定より、15日遅れています
○さんに4つのタスクが集中して、過負荷になっています。
この内容では、印刷費が8万円オーバーします。

 
具体的な数字に置き換えられると、誰でも同じ「量」をイメージできるようになります。
 
タスクが複雑に絡んでくると、頭で考えている認識がぼやけてきて、具体的に報告できにくくなり、クラブ全体でぼやけたイメージを共有するだけの、ダメなミーティングになってしまうのです。
 
進捗状況を正確に共有するために、ホワイトボードにチャートや図解・イラストなどを添えて可視化することは有効な方法です。
 
ただし、部室に居なければ見られないため、みんなが通学中や自宅からでもアクセスでき、無料で利用できる「スケジュール共有」ツールや「タスク管理」ツールを利用することも検討してみてくださいね。
 

進捗を管理する手法⑤:プロジェクト管理には沼がある、気をつけよ

「プロジェクト 管理 ツール」検索でヒットしてくるプロジェクト管理ツールは、ビジネスマンが大規模プロジェクトをマネジメントするために開発された、それはそれは便利でよく考えられた機能が盛りだくさん搭載された管理ツールが名を連ねます。テレビCMで名前を聞く商品名もあるでしょう。
 
ガントチャート

 
多くのプロジェクト管理ツールでは、機能制限された無料版も利用できるようになっています。
学生のあなたたちも、いちど経験のため、ダウンロードして無料版を使ってみるのもいいかもしれない。
 
しかーし、立派なツールを使って、人の行動や進捗を厳密に管理しようと思っても、目の前で起こる人の行動は、自分勝手で、無責任、嘘つきで、ポンコツな野郎たちの言い訳を前に、人間不信に陥ること間違いなし。
 
プロジェクト管理ツールを利用すれば、誰でも上手に人を動かして、タスクを時間通りに完了させられる…はずがありません。残念!
 
プロジェクト管理ツールは、複雑に関連し合うタスクの遅延やその影響を 目で見えやすくするためのツールです。
遅延しているタスクを、うまいことすーっと実行して、決めた期限に間に合わせてくれる夢のツールではありません。
 
タスクを行うのは、生身の人間。
正直、まだ学生で、甘ったれで、嘘ばっかりつく部員たちが「実行責任」を追うのです。
 
そしてプロジェクト管理役のあなたたち大臣が、遅れてそうなタスク、遅れているタスクに気づいて、人員の配分を見直し、タスク進行を調整して、プロジェクト全体が計画達成できるよう推し進めるのです。
 
大変な役回りだけど、社会人になったら、誰かがやっていることなんです。
だから、ここで大臣の二人が体験することは、同級生のなかで、ひと足お先に大人の入り口に立つことでもあるんです。
 

部活動を通じて、オトナになっていこう

 
2年生のふたりに突然割り振られた「パンフレット制作プロジェクト」。
きっとうまく行かないから、心臓バクバクさせられることばっかりだから。心配しすぎないで、ドーンと向かっていこう。
 
「人を動かして、思ったとおりに実行してもらう」ことが、どれだけ困難なことか、肌身に染み込ませながら、大人の階段を登っていこう。
 
このミッションを完了した先には「すごく大人になった大臣経験者」がこのクラブに生まれるわけ。そしてその貴重な経験は、かならず次の大臣にバトンタッチすること。そこまでやって、大臣役を全うしたことになるのです。
 
これを毎年繰り返すことで、他よりちょっと大人になった2年生が輩出され続け、責任感が強い、より成長した部員が集まった「大人のクラブ」になっていく。
 
部活によって〈子供の集まりクラブ〉もあれば、すこしだけ背伸びした〈ちょっと大人のクラブ〉もあります。
 
でも1年生は、どこの部員もだいたい同じ「何も知らない子供」として入部してくるよね。
 
ところがクラブ活動を一年間経験するなかで、先輩の責任を担う仕事を見て「うわー、先輩大変やなー」と思い、1年の自分も「しっかりしなきゃ」と自覚もだんだん芽生えてきます。
 
2年生になれば、新入生の指導という責任を負い、また部活動の中核メンバーとして、成長の階段を登っていきますね。
 
部活動は、そもそも楽しく行うもの。
もともと興味があって、周りの人よりちょっと上手にできそうなことを、仲間とともに助け合って、上達して、人間としても成長することができる、自主的な課外活動の場です。
 
自分に割り当てられたミッションに対して、萎縮せず、果敢に取り組み、小さな失敗をたくさんやらかしながら、壁を乗り越えていってほしいものです。
 
ここだけの話、オトナもたくさん失敗します。「オトナは失敗しない」なんてことはありませんからね。
 
オトナの社会では、失敗をカバーする人がいる。
小さな失敗を放置せず、大きな失敗にならないよう制御するのが管理責任者なのです。
 

広告営業もオトナの入り口

入場料を徴収する演奏会や上演会を主催するクラブは、協賛していただく広告主に対する言葉遣い、態度、礼儀など、準大人の行動を求められます。
 
「ちわーっす、○高○○部っす。3月に演奏会やるんで、パンフレット広告出しませんか?一枠3,000円からっす。きっと儲かりまっせ!」
 
こんな言動で広告営業をすれば、地元の小売店でも怒って門前払いするどころか、今ならSNSで厳しく叱責されること請け合いです。
 
満席800人のローカル公演のパンフレット広告なんて、正直なところ〈広告効果は皆無〉といっていいでしょう。
それでもここで「広告を出してもいいよ」と3,000円出してくれるのは、高校生が背伸びして、慣れない敬語を駆使して、こんなローカルビジネスの小売店に広告営業に回ってきたことに対する「恩情」からです。
 
「そうかそうか、よく勇気を振り絞って来てくれたな、がんばりや、おっちゃんも応援するわ」と、お店の売上の中から3,000円を寄付してくれたようなものなんです。
 
「広告効果は無いかもしれませんが、僕らの活動を応援してください」と誠意を態度で示して、お願いに廻ることが肝心です。
 
「おまえら、広告取りの時だけエエ子になりよる」と思われないよう、平時から、地元の役に立つ活動(たとえば定期的なゴミ拾いとか)で商店街との良好な関係を築くようなことができるかもしれませんね。
 
自分たちが主催する公演を資金サポートしてもらうためには、サポートしていただく相手の役に立ったり、応援してもらえる価値があるクラブにならなくてはいけません。
 
そのことに気づいたクラブは、もう来年に向けて行動を起こしています。