デザインの買い方、ムズカシイですよね。
デザインって、どこで売ってるの?
近所のスーパーマーケット、近所のコンビニ、駅前のデパート…
どこに行っても「デザイン」って商品は売っていません。
いったい、どこで売ってるの?
義務教育過程では教えてくれなかったよ。
デザインは、店頭に陳列されている商品ではありません。
「100g 300円」とか「5個入 298円」という
数量と単価で値付けされるものでもありません。
なぜなら、デザインは「ある独自の注文」に応えて作られる「カスタム商品」だからです。
わかりやすいイメージで例えると「注文建築」のようなものです。
だからお店には並んでいないし、価格も一定ではありません。
なかには「デザイン1個3,000円(本日限り)!」なんて売り方をしていることもあるかもしれません。
でも、その売り手には悪いけれど、それは破れかぶれの叩き売りですぜ。
フーテンの寅さんなら、こう発するでしょう。
「えーい、もってけ泥棒っ!自棄のやんぱち、日焼けのなすび 色は黒くて食いつきたいが わたしゃ入れ歯で 歯が立たないよ、と来やがった!負かった数字がこれだけ、どう?一声千円と行きたいが、ダメか、八百?六百?よーし腹切ったつもりで五百両、もってけ、オイ!」
…ちょっと脱線しました。
賞味期限が近づいた在庫を売りさばくために「本日限り」「在庫一掃」の販売をする、これが飲食や生鮮の小売業ですよね。
鮮度が落ちて、売り物にならなくなってしまう不良在庫は、一掃しなくてはなりません。新しい品物も入荷できなくなってしまいます。
一方「デザインの在庫」ってのは、ありません。
デザインアイデアの在庫は、デザイナーの頭の中や、引き出しにストックしていたりしますが、それを店頭に並べることはありません。
誰かに知られると、真似されてしまうじゃないですか。
そして何より重要なことは、デザインを買いに来る人が求めるもののキモは
「他の人と違う」デザインが欲しい、ということです。
隣の店と違う、ネットで探しても似ている商品がない
「デザイン=違い」と言い直しても良いくらい、これが事実です。
だからデザインはお店に並んでいないのです。
依頼主はこっそりデザイナーに近づいて、良い条件をちらつかせて
どこにも無さそうなオリジナルのデザインを開発してもらうのです。
そう、デザインは開発するものなのです。
ご依頼主が個人的に気に入っている
「◯◯みたいな」「◯◯のような」デザインを依頼することについて、
もう少し注意して考えてみるといいですよ。
もちろん〈好き/嫌い〉は誰にでもあります。
ご自分のビジネスを客観的に見て
商品やサービスを、競合と比較してどんな違いを作って、
差別化して売っていくのが正しいか(あるいはおもしろいか)
マーケティング行為として見直すことが、デザインの始まりなのです。
専門職能の対価
大阪府の最低賃金はいくらかご存知ですか?
令和2年(2020年10月)改定で前年据え置きで、964円/時です。
コンビニで初めてのアルバイトをしようとした高校生が、1時間労働してもらえるお給料が964円ということです。
当然、なんにも知らない、なんにもできない、さらっぴんの高校生が、店長やバイトの先輩から手取り足取り指導を受けて、異常に長く感じた最初の1時間の対価です。
いやー初々しいですよね。手のひらも、脇汗もすごいことになっているけれど、「お先に失礼しま〜す」一礼して店の裏から出るときの清々しい解放感…。
で、何が言いたいのか。
ロゴなんかチャチャっと作っちゃってよ。
なんかカッケーやつ。
2,000円でなんとかなるよな?
でもねー、著作権は放棄してもらうよう、上から釘さされてんのよ。
あ、それから税込でね。
そんな依頼話、巷ではケッコーあるんです。
ツッコミどころは、いっぱいあります。
▶ ロゴは、チャチャッとなんかできません。
▶ 2,000円って、バイトが2時間で完成できる質量の対価ってことですよ。
▶ それが税込価格なら1,818円(税182円)→2時間の最低賃金以下ですよ。
▶ 著作権放棄させるって、どういうことか解ってますか?
これから受発注にまつわる齟齬をひとつずつ溶解していきましょう。